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トランプは夏時間を廃止してアメリカ時間を取り戻す?
共和党は、サマータイム(夏時間)を廃止するためにベストな努力を尽くそうとしている。
夏時間には小規模ながらも熱心な支持者がいるが、本来そんなものは必要ないはず! 夏時間は国にとって不便で、とてもコストがかかるのだから。
システム部の渡辺です。
次期アメリカ大統領のトランプ公式、Truth Social と X にて、12月14日に上記の「サマータイム夏時間は廃止すべき」とポストされました。
サマータイム夏時間は、プログラマーなら日付計算、タイムゾーンとかで目にするとこですが、日本在住の私にはあんまりピンときません。実業務でサマータイムに関係するプログラムを書いたこともないです。
トランプ公式ポストとはいえ、本当に廃止するのか話半分に「へー」ぐらいの信憑度かもしれませんが、これを期に勉強の意味も含めてサマータイム夏時間について知識を深めてみたいと思います。
BBC 記事
Trump vows to end ‘very costly’ daylight saving time
アメリカ時間
サマータイム(夏時間) とは?
3月から11月の間、全員の時計を1時間進めることを義務づけた法律です。
英語で
「Daylight Saving Time」
(第二次世界大戦中は「War Time」と呼んでいた)
日本語だと
「サマータイム」
(1952年はサンマータイムと呼んでいた)
「夏時間」
(以下、夏時間で表記)
夏時間のない日本人の感覚でざっくり解釈すると
- 今までは 10:00 出勤だったけど、夏は明るいから 9:00 出勤にしようか。これ全員強制な!
- 夏だけ 9:00 出勤っていったらみんな間違えそうだから、
よし、みんな一緒に時計を1時間進めて 10:00出勤! (実質9:00出勤) - あー、だいじょうぶ! 秋になったら戻すから! (秋にまた1時間戻す)
むちゃくちゃじゃないすかと思うのですが、けっこうな数の国が今現在こういう仕組みです。
アメリカを例に、1時間ずれる瞬間とは?
夏時間の始まり
3月の第2日曜日 午前2時(標準時) に 1時間消失して、1日が 23時間になる
夏時間の終わり
11月の第1日曜日 午前2時(夏時間)に 1時間増えて 1日が 25時間になる
EU では違う日に夏時間の始まり終わりがあるというので、混乱します。
トランプポストのリアクションは?
廃止派の方が多そうにみえます。
夏時間を支持する人に一人も会ったことないんだわ。
夏時間だけにして、標準時間を廃止する方向にはできませんか?
(11月に戻さないで永遠に 1時間ずらしたらいいんじゃない?)
夏時間の実施状況
実施中
- アメリカほぼ全部 (アリゾナ州一部、ハワイ州を除く)
- カナダ
- EU 加盟国 + イギリス
- イスラエル
- など
廃止済
- 日本 – 1948年 GHQ指導で採用、1952年に廃止。
- 中国 – 1991年に廃止。
- ロシア – 2014年に廃止。
- ブラジル – 2019年に廃止。
- など
夏時間が生む不思議な状況
1日が24時間ではない日がある
時間消失と増加があるのは 2:00 なので、ほとんどの人にとっては「寝てる間のできごと」でしょうが、夜勤、夜働く職種の人は「今日は1時間ながいのかよ!」となりそうです。
もしアナログ時計で調整忘れたら
「出勤時間、1時間も遅刻するとはどうしたの?」
「夏時間になったのに時計の調整を忘れちゃって」
みたいなことが日常でありそうです。
(タイムサーバーに時間をとりにいくシステムのあるデジタルな時計は勝手になおる)
夏時間は SE 泣かせ
(もしもサーバー 、cron が内部で利用するタイムゾーンを「夏時間のあるタイムゾーン」にしてしまった場合に限り)
毎日 2:00 にバックアップをとるような cron 設定をしていたりしたら、
夏時間開始日は実行されず、夏時間終了日には2回実行される、というとんでもないバグが起きてしまいます!
日本のサーバーは JST にするのが当たり前なので、海外も地域のタイムゾーンを採用するものと思ってましたが、夏時間のある国ではサーバーをUTC (協定世界時。ざっくりイギリス時間) にするのが当たり前のようです。
夏時間、歴史でみると、いつからある?
アメリカ建国の父の一人、Benjamin Franklin がオリジナルという説もあるようですが、
1784年 ベンジャミン・フランクリンが冗談まじり(?) でフランスの新聞「Journal de Paris」に寄稿されたエッセイの中で提案。
https://www.webexhibits.org/daylightsaving/franklin3.html
「早起きしたらロウソクの消費とか抑えられるから、みんな大砲で起こしたれ!」というような内容のようなので、たまたま似た発言をした歴史上の有名人ぐらいの立ち位置にみえます。「早起きは三文の徳」であって「時計をずらせ」ではないですね
wikipedia を信用すると、夏時間の原型は、「仕事の後に昆虫採集をしたい昆虫学者(ニュージーランド)」「仕事の後にゴルフをしたい建築士(イギリス)」という、「自由時間を楽しむ」目的の提案のようです。
実際の世界の夏時間運用は採用と廃止を繰り返しており、世界大戦&オイルショック(経済危機)の歴史とセットで、「節約の歴史」としてみると納得がいきます。
(世界で初めては、1908年にカナダで地域限定の実験的導入)
第一次世界大戦中にドイツ帝国とオーストリア・ハンガリー帝国が採用 (1916年)、他国も追随
→ 戦争が終わると多くの国が廃止。(アメリカの夏時間廃止 1919年)
第二次世界大戦中に再び採用(アメリカはこれを War Time と呼んだ)
→ アメリカは1942年〜戦後も一部地域で続け、1966年に全国統一。
オイルショック後に世界がそろってだいたい導入 (ざっくり認識)
感想
トランプの MAGA – Make America Great Again ですが、Great って何年のアメリカ? というと「中央銀行、所得税が生まれる前のアメリカ」という話があります。
1913年 – アメリカの中央銀行 FRB が設立された年
1913年 – アメリカの連邦所得税(Federal Income Tax)が導入された年
1918年 – アメリカの夏時間が初めて採用された年
夏時間の廃止は「世界大戦より前のアメリカの経済成長を取り戻せシリーズ」の1つかもしれません。
歴史でみると夏時間とは「世界大戦時の特別な経費削減を国民に強制するルール」にみえますが、今さら廃止というのは慣れすぎて日常が変わるのが怖いという人もいる、といった感じでしょうか。夏時間があるとプログラマーはちょっと大変なこともありそうなので、廃止した方が助かるプログラマーは世界にたくさんいそうですけどね!