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犯罪予告のお問い合わせが来たら

制作・撮影

こんにちは、ディレクターの中野です。

最近、クライアントの病院様から「ホームページに設置しているフォームから爆破予告のお問い合わせが来た」という旨のご連絡をいただきました。

”8月中に〇〇病院を爆破して医師患者を大勢殺害する。
△△△△△△@gmail.comにアマギフ100万円分送ってこい。”

内容としては、上記のようなメッセージが送られてきたほか、フォームを送信した際にユーザーに届く受付完了メールの送り先に、本件と全く関係ない不特定多数の方のメールアドレスが記載されていたとのこと。また、ご連絡を受けて確認したところ、どうやらこの手の爆破予告は全国的に行われているらしく、実際に弊社も複数のクライアント様から同様の報告を受けました。

このような爆破予告や殺害予告、なんとなく他人事のように思えますが、いざ自分や職場に送られてくるとびっくりしますよね。
そこで今回は、このような「インターネット上の犯行予告」を受けた際の対処法について、ここにまとめていこうと思います。

そもそもインターネット上の犯行予告とは?

対処法について話す前に、本記事の理解をより深めるために、「そもそもインターネット上の犯行予告とはどのような行為が該当するのか」「何の罪に問われるのか」といった、基本的なところからご説明していこうと思います。

インターネット上の犯行予告とは、Webサイト、掲示板、SNS等を利用して犯罪予告をしたり、書き込みを行う行為のことを指し、具体的には「○月○日に、△△病院で人を殺します」「明日××百貨店に火をつけます」といった内容が挙げられます。

また、実際に犯行に及んだ場合はもちろん罪に問われますが、イタズラや冗談で書き込みをしただけの場合でも、ケースによっては大きな犯罪となり得ます。

前述した通り、これらの行為を行った場合は刑事罰の対象になるのですが、実際のところ何罪に該当するのかご存知でしょうか。
調べてみたところ、具体的な予告内容や影響によって適用される罪名は変わってきますが、メインとしては下記の罪に該当することが多いようです。

成立し得る犯罪
脅迫罪(刑法第222条)

概要:犯行予告が具体的な危害を加える内容を含む場合、その対象となる人や組織を「脅す」行為が脅迫罪に該当します。
罰則:2年以下の懲役。
具体例:「生命、身体、自由、名誉または財産に対して危害を加えることを告知し、相手に恐怖を感じさせる行為」が対象です。例えば、インターネット上で「殺害されたくなければ金品を支払え」といった予告をすることがこちらに該当します。

強要罪(刑法第223条)

概要:他人に対して暴行や脅迫を用いて、何かを強制させたり、逆に義務のないことを行わせないようにする行為が脅迫罪に該当します。
罰則:3年以下の懲役。
具体例:相手に対して暴力を振るうか、脅迫をして恐怖を与える行為が対象です。例えば、インターネット上で「殺す」「爆破する」といった予告をすることがこちらに該当します。

威力業務妨害罪(刑法第233条)

概要:犯行予告によって学校や会社、施設などが通常の業務を停止したり、避難措置を取ったりするような事態を引き起こす場合は、威力業務妨害罪に該当します。
罰則:3年以下の懲役、または50万円以下の罰金。
具体例:「威力」(脅しや犯行予告などの力)によって、相手の業務が妨害されることが対象です。例えば、インターネット上で「〇〇病院に爆弾を仕掛けた」という予告が行われ、実際にその病院が閉鎖された場合、こちらに該当します。

偽計業務妨害罪(刑法第233条)

概要:虚偽の情報や嘘によって業務を混乱させたり、妨害した場合は、偽計業務妨害罪に該当します。犯行予告自体が嘘である場合でも、業務が妨害されればこの罪が成立します。
罰則:3年以下の懲役、または50万円以下の罰金。
具体例:虚偽の情報や騙しを使って相手の業務を妨害する行為です。「〇〇病院に爆弾を仕掛けた」という予告が嘘であっても、避難や捜索などで業務が妨害された場合、こちらに該当します。

軽犯罪法違反(軽犯罪法第1条)

概要:具体的な計画がない犯行予告でも、インターネット上で不安を煽ったり、社会の秩序を乱すような行為は軽犯罪法に違反する場合があります。
罰則:拘留(30日未満)または科料(1万円未満)。
具体例:「虚偽の犯罪情報を公然と流布すること」が対象です。例えば、「今夜〇〇病院で事件を起こす」といった根拠のない予告が該当します。

電子計算機損壊等業務妨害罪(刑法第234条の2)

概要犯行予告によって、コンピュータシステムやネットワークを通じて業務が妨害される場合、この罪が適用される可能性があります。
罰則:5年以下の懲役または100万円以下の罰金。
具体例:コンピュータやネットワークを利用した不正行為で業務を妨害する場合です。犯行予告を伴うサイバー攻撃やネット上の大規模な妨害行為が該当します。

脅迫罪や強要罪はなんとなくイメージが湧くかと思いますが、個人的に「電子計算機損壊等業務妨害罪」はあまり馴染みのない犯罪だなと思いました。
どれも法律上厳しく処罰されるので、たとえ冗談や軽い気持ちでも、疑わしい行為はしないに限りますね。

犯行予告を受けた時の対処法

さて、実際にインターネット上で犯罪予告を受けた場合ですが、ざっくりと下記のフローで対応していけば良いかと思います。

  1. 犯行予告の内容を確認する
  2. 証拠を保存する
  3. 警察に通報する
  4. サービスプロバイダやサイトの運営者に連絡する
  5. 職場や施設の関係者に知らせる
  6. メディアや外部へ情報発信をする
  7. 事後対応

各項目について、下記で詳しく説明していきます。

01. 犯行予告の内容を確認する

まずは、犯行予告がどのような内容か確認します。特に以下の点に注意しましょう。

  • いつ犯行が行われるのか(日時の指定があるか)
  • どこで犯行が行われるのか(場所の指定があるか)
  • 誰が標的なのか(個人、グループ、会社、病院など特定されているか)
  • 何をするつもりなのか(具体的な行動、たとえば「爆破する」「暴力を振るう」など)

この情報をもとに、「どのくらい緊急性があるか」を判断しますが、必ずしも内容の信憑性は自分で判断せず、後述するように警察に通報するのが良いかと思います。

02. 証拠を保存する

内容を確認した後は、犯行予告が「どこから来たのか」「誰がしたのか」「どのようにしたのか」といった証拠を保存しましょう。

具体的には内容のスクリーンショットを撮ったり、記載された場所のURLを控えておくなどがあります。また、お問い合わせや書き込みがあった日時や相手の名前(インターネットのハンドルネームやアカウント名)なども、重要な情報となります。

犯行予告をされたのがWebサイトやSNS上の場合は、犯人によって削除されてしまう可能性もあるため、証拠はなるべく早いうちに保存しておくことをおすすめします。

03. 警察に通報する

証拠を保存したら、すぐに警察に通報しましょう。
110番に電話をかけるのが一般的ではありますが、警視庁にはサイバー犯罪を専門とする部署(サイバー警察局)もあるので、そちらに直接相談することも手の一つかと思います。
また、その際は下記の情報を正確に伝えましょう。

  • 犯行予告が行われた日時(いつ見つけたか、いつ投稿されたか)
  • 犯行予告の内容(予告されている行為や場所、対象など)
  • 保存した証拠(スクリーンショットやURL)
  • 投稿されたWebサイトやSNS(プラットフォームの名前、URL、アカウント情報)

これらの情報をもとに、警察が脅威の評価や捜査を進めます。

04. サービスプロバイダやサイトの運営者に連絡する

犯行予告が書かれているWebサイトやSNSの運営に、速やかに連絡をします。
大抵のインターネット掲示板や各種SNSには通報機能が備わっているのでそちらから行い、Webサイト上のフォームなどから犯行予告が来た場合は、サービスプロバイダやホームページの制作会社に連絡してください。

具体的な手順はサービスによって異なりますが、報告する際に次のような情報を含めると良いかと思います。

  • 犯行予告のスクリーンショットやリンク
  • 犯行予告が行われた日時やアカウント名

私たち業者がこれらの情報をもとに、犯人のアカウントを停止したり、書き込めないようにするなど対応を行うほか、証拠として警察に提出するアクセスログの抽出なども行います。

また、今回の弊社クライアント様の事例では、受付完了メールにお問い合わせ内容が記載される仕様でしたので、ユーザーにとっては「身に覚えのない爆破予告をした」ということになります。
ですので、受付完了メールにお問い合わせ内容を反映させない仕様に変更したり、「本メールに身に覚えのない方は削除をお願いします。」といった注意書きを追記するなどして、対応させていただきました。

05. 職場や施設の関係者に知らせる

犯行予告の対象が職場や病院など特定の施設である場合は、すぐに上司や管理者に報告をしましょう。
施設の関係者とともに、必要ならば避難計画を立てるか、セキュリティを強化します。例えば、警備員を増やす、出入り口を制限する、建物内での警戒を強化する…など。

06. メディアや外部へ情報発信をする

例えば、今回の弊社クライアント様の事例のように第三者が巻き込まれていた場合などは、外部への情報発信も必要となります。

具体的にはホームページ上にお知らせを追加したり、SNSでアナウンス文を投稿するなどが良いかと思います。誤解を避けるために、慎重かつ正確な情報を発信しましょう。

また、同時に警察や捜査機関との情報共有も続けます。

07. 事後対応

犯行予告が虚偽であった場合でも、なぜそうなったのかを振り返り、再発防止策を考えましょう。
具体的な再発防止策としては、下記などが挙げられます。

  • 被害にあったメールアドレスを変更する
  • 爆破予告等の迷惑メールの受付や書き込みをできないようにする
    →本文内に「爆破」「殺害」などを含む場合は送信させない。
    →犯行のあったメールアカウント(ユーザー名)を含む場合は送信させない。

また、事態が落ち着いたら脅威が取り除かれたことを関係者に伝えるなどして、安心させることも大切です。

このように、インターネット上の犯行予告には即座に対応し、証拠の保存と警察・関係者への連絡が最も重要です。また、予告を受けた側の安全を確保し、必要に応じてメディア対応やメンタルケアも行うことも大切です。

さいごに

法務省の調べによると、インターネット上の犯行予告を含む「サイバー犯罪」の検挙件数に関して、最近20年間では平成16年以降増加傾向にあり、令和4年の時点では1万2,369件もあったとのことです。

【出典】法務省 令和5年版 「犯罪白書」 第4編/第5章/第1節

なんと、20年前の6倍以上とのことで、インターネットやSNSで誰でも簡単に情報発信をできるようになった故、想像以上にこのような犯罪は身近な存在になっているようです。

さて、今回はインターネット上の犯行予告と対処法をご説明いたしましたが、いかがでしょうか?
万が一、自分や職場が犯行の対象になってしまったとしても、まずは証拠を確保して冷静に対処することを心がけたいですね。

出典・参考サイト