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デザイナーの目で見るイスタンブール

社員の日常

デザイナーをしている呉です。

少し前にはなりますが、今年の6月に2週間のお休みをいただいてギリシャとトルコに行きました。
回った遺跡や教会はどれも美しい壁画やモザイクで飾られており、デザイナーとして大いに触発される旅行でもありました。
なので今回は、イスタンブールで私が特に気に入った作品を紹介していこうと思います。

トプカプ宮殿

イスタンブールといえばアヤソフィアやブルーモスクなどのイスラム教会が人気ですが、オスマン帝国の歴代君主の住まいである「トプカプ宮殿」はその二つのすぐ近くにありながら、モスクよりも親しみやすいイスラム芸術で飾られています。
トプカプ宮殿はとくに植物の紋様が多く、壁面の紋様はほとんどは植物を模しています。

「糸杉のタイル」

最も多く描かれている木は宮殿内にも植えられている糸杉ですが、最も多く描かれている花もこちらに描かれています。何かわかりますか?
糸杉の根本に生える赤い花なのですが、正直私には花というより唐辛子に見えます。正解はチューリップです。
チューリップはトルコでよく親しまれている花だそうで、旅行前にこれを知り、わざわざチューリップのイヤリングをつけていったらなんと現地ガイドさんに気づいてもらえ、beautiful!と褒めていただけました。それくらい愛されているようです。
そんな思い出もあるので、唐辛子みたいなチューリップもお気に入りの一つです。

写実的な西洋芸術も美しいですが、このように特徴を残したまま簡略化された絵は、デザイン業務のなかでいつも作っているアイコンと立ち位置が少し似ているように思います。
診療科のアイコンなど作るときも、なるべく一目でそれが何か伝えられるように意識します。
このトプカプ宮殿に糸杉の絵が多い理由は糸杉は生命の木であると考えられているためであるそうです。そのため、一目で糸杉だとわかるように細さが強調されています。
糸杉やチューリップなどは有名でわかりやすいですが、他の植物は正直どれが何やらわかりませんでした。それでも今の私と同じように特徴を掴んで表そうと苦心したのだろうと、かつてのタイル職人の苦労に想いを馳せたりするのもデザイナーならではの楽しみ方かもしれません。

「タイル」

こちらも見事なタイルです。1番上にはイスラム文字文様があります。アラビア書道、カリグラフィー装飾ともいうそうですが、見慣れないうちはしょっちゅう見落とします。気づいてからもこれが文字なのかとただただ感嘆します。
メインビジュアルにおくキャッチコピーのタイプグラフィに悩まされたことは何度もありますが、こればかりはレベルが違いすぎて共感というより頭が下がる思いです。文字に対する執念を感じます。

「謁見室」

外国からの贈り物で飾られた、トプカプ宮殿のなかでも有名な部屋です。
陶器は中華風で柱はバロック風で、交易の要衝であったことがうかがえます。ちなみにここにもイスラム文字文様がありますが、見つけられましたか?

「お風呂場」

トプカプ宮殿は太陽光の取り入れ方がとにかく美しかったです。天井に拳くらいの穴がハスの花のように空いており、そこから木漏れ日のように光が入ってくるため、細い廊下や小部屋でも閉塞感を感じません。
なぜ細い廊下や小部屋が多いのかといいますと、実はこの宮殿はその華やかさからは想像できないほど陰惨な歴史の舞台でもあります。
この写真の場所はお風呂場なのですが、お風呂場になぜ鉄格子があるのかも、お察しいただけるかと思います。それでもこれだけ綺麗なのだから大したものです。

アヤソフィア

トプカプ宮殿も綺麗ですが、イスタンブールといえば欠かせないのはアヤソフィアです。
2020年にモスク化したため1階には入ることができず2階のみの入場でしたが、有名なモザイク画は見ることができました。

「デーシス」

最も美しいモザイク画と称されるこちらの作品ですが、そうはいってもそもそもモザイク画を見る機会がさほどない私からすると何が最もなのか、ピンとこないまま足を運びました。
実物を見て納得したのですが、モザイクとは思えないほど細かいんですね。超絶画素数です。
モザイクとは鮮やかな岩石やガラスを砕いて貼る技法ですが、これにはどれほどの時間と労力が費やされたことでしょう。またまた頭が下がります。

宗教芸術といえば、例えば百合の花は聖母マリアを表している、など象徴的な要素がいくつもありますが、色にもその象徴性が現れます。

不勉強なためこの作品に使用されている色にどんな意味があるのかはわからないのですが、背景に使用されている見事な金色を見れば、何も知らない人でも描かれている人間が特別であることは一目でわかります。

そのため色はアイコンやイラスト以上に直接的に印象を操作できますが、そのぶん扱いがとても難しく、デザイン作成時も最も気をつけているといっても過言ではありません。使用している色を少し変えただけでも全く別のデザインのように見えるほどです。

識字率の低かった時代における宗教芸術は、布教のためにも重要な意味があったと聞きますが、であればなおさら色の持つ力は重要だったことでしょう。ついつい綺麗さだけで色を選びがちな自分ではありますが、きちんと意味を持たせた色を使いたいです。

最後に

かけ離れているようにみえるビザンティン美術とデザインですが、一つ一つよく見るとずいぶん学ぶことがあったように感じます。せっかくいただいたおやすみ中の旅行ですから、少しでも自分の仕事に活かしたいと思います。