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医療費はどうやって決まるの?
こんにちは、中野です。
季節が本格的に秋に移り、すっかり肌寒い季節になりましたね、いかがお過ごしでしょうか。私はこの頃、弊社二度目の展示会に出展したり、新規の病院様のサイトリニューアルに向けて書類を作成したり、Webサイトに掲載するSEOコンテンツの制作などをして過ごしていました。
日々コンテンツのライティングをしたり、お客様から依頼される更新内容に目を通していると、「診療報酬」「高額療養制度」「自立支援医療(育成医療)」といった用語を目にします。漢字の並びからお金、もとい医療費に関係することは察せられるのですが、残念ながら詳細までは分からないことが多々あります。不明な用語が出てきたときは、その都度調べるようにしているのですが、これがなかなか頭に入ってこなかったり、その場では理解したつもりでもしばらく経つと忘れてしまうといったこともしばしば…
元来、医療制度や仕組みが複雑であることが、理解を難しくする一因ではあると思います。一つの用語を調べると、その説明の中にまた知らない用語が登場することなんてザラにあります。
しかし、それだけではなく、そもそも医療費の仕組みをよく知らないまま、用語をぶつ切りの知識で覚えようとするから余計に難しく感じるのではないかと思いいたりました。そこで今回は、これらの用語を医療費算定の基本的な仕組みから、体系的に整理してみようと思います。半ば自分用の備忘録目的ですが、少しでもご参考になれば幸いです。
はじめに
現在の日本の医療制度は、国民皆保険制度を採用しており、全ての国民が公的医療保険に加入しています。この制度により、医療費の大部分が保険でカバーされ、患者さんの自己負担額を軽減することができます。そして、この医療費を決定するための基盤となっているのが「診療報酬制度」であり、こちらにはさまざまな要素が絡み合ってくるわけです。まずはこの「診療報酬制度」について、整理していこうと思います。
診療報酬制度の概要
診療報酬
診療報酬とは、病院やクリニック、医師などの医療機関が提供する医療サービスに対して支払われる対価(=お金)のことです。日本では、この報酬は国が定めた「診療報酬点数表」に基づいて計算されます。患者さんが受けた診察や検査、治療のすべてが点数化され、その合計点に1点あたり10円を掛けて医療費が算出されています。
病院でお会計をする時にもらう領収書や診療明細書が点数表記なのも、この制度があるからですね。全国どこでも同じ医療行為には同じ報酬が支払われるように設定されているため、どの患者さんにも明確かつ平等な医療を提供できるというわけです。
診療報酬点数表
診療報酬点数表には、すべての医療行為やサービスに対して点数が付与されています。これは国が定めたもので、たとえば一般的な診察には200点、特定の検査には500点など、おこなった医療の内容や複雑さに応じて異なる点数が設定されています。患者さんにとっては、これが医療費を計算する基礎になります。
医療行為の種類と診療報酬
ここまでで、医療費とはひとつひとつの医療行為ごとに定められた点数(=診療報酬の点数)が基盤になる、というところはざっくりとご理解いただけたかと思います。
しかし、この点数を使った医療費の算出方法については、外来診療と入院治療で大きく異なるケースがあります。次は、この2つケースの算出方法について見ていきましょう。
外来診療と入院治療
外来診療では、医師の診察や検査ごとに点数が加算されていく「出来高算定方式」が使われています。たとえば、診察と血液検査と投薬を行った場合、それぞれの点数が合算されて最終的な負担額が決まるといった感じです。シンプルでわかりやすいですね。
入院治療に関しても、前述の「出来高算定方式」を導入している病院はありますが、主に急性期医療を提供する大規模病院や特定機能病院では、「DPC制度」を導入していることが多いです。
「DPC制度」とは、DはDiagnosis(診断)、PはProcedure(治療・処置)、CはCombination(組み合わせ)の頭文字から由来し、病名や治療内容に基づいて、あらかじめ設定された金額が適用される仕組みのことです。
DPC制度について
以前までは全ての病院において、入院治療でも出来高算定方式が使われていました。しかし、昨今は急速な高齢化にともない、医療需要そのものが増加しています。その中でも入院治療は高額になるケースが多いため、医師が治療をすればするほど医療費が積み上がってしまう出来高算定方式では、患者さんの負担が大きくなりすぎてしまうといった課題がありました。また、同じ病気でも病院によって治療内容や入院期間にばらつきがあるという、医療の質や効率化といった点も問題視されていました。
そこで、2003年度から導入されたのがDPC制度です。DPC制度では、「手術・麻酔」「リハビリテーション」など一部の処置(出来高評価部分)においては従来の出来高算定方式を踏襲しつつ、「入院基本料」「画像検査料」「投薬料」「注射料」などの主に入院に関連する費用(包括評価部分)が、1日あたりの入院点数として一括で計算されます。
つまり、入院中の治療に対して、あらかじめ診断名や治療内容に基づいた定額の費用が決まっているため、包括評価部分にあてはまる診療行為をいくらおこなっても、1日あたりの金額は変わらないということです。また、疾患によって規定の入院日数が3段階で定められており、日数が長びくほど定額の金額が低くなっていきます。
※ただし、入院が長期にわたり定められた入院日数を超えてしまうと、出来高算定での計算となります(定められた入院日数は疾患により異なる)
また、DPC制度では入院患者さんの治療内容や結果をデータとして収集しています。このデータを活用することで、各病院の治療成績や平均入院日数を比較し、医療の質を客観的に評価することができ、医療サービスの改善や新たな治療法の導入につながるのです。
ざっくりとまとめると、DPC制度では一定の質が担保された医療を適正な費用で受けることができる。定額制なのであらかじめ入院費用の目安がわかる。という患者メリットと、医療の標準化・効率化が進む。データを上手に使うことで医療の質向上につながる。という病院メリットがあるということですね。
病院の運営と医療費
診療報酬制度によって、医療サービスごとの基本的な料金は全国で統一されていますが、それでも病院ごとに医療費が異なることがあります。これは、病院の規模や設備、提供されるサービスの種類などによって、診療報酬以外の要素が医療費に影響を与えるからです。いくつかの例を紹介していきます。
病院の種類
病院の運営形態によっても医療費は異なります。公立病院は国や地方自治体が支援しているため、医療費が安くなることがあります。一方、私立病院は独自の経営方針を持っているため、医療費が高く設定されることが一般的です。また、専門病院や総合病院でも医療費は異なり、特定の疾患に特化した病院ではその治療に特化した報酬が適用されることがあります。
地域差
地域によっても医療費は異なります。特に都市部の病院は物価が高いことが多く、医療費もそれにともなって高くなることがあります。逆に、地方の病院では比較的低価格で医療を提供していることが多いです。地域ごとの医療資源の分布や、人口の高齢化、医療ニーズの変化も医療費に影響を与える要因となります。
追加料金や選択料金
一部の病院では、個室や特別室の利用、選択療法などに対して追加料金が発生することがあります。これにより、総医療費が異なる場合があります。たとえば、個室に入院した場合、通常の病室よりも高額な費用が発生します。また、選択療法や最新の治療法を受ける場合、保険適用外となることが多く、その分の負担が大きくなることがあります。
患者負担と保険制度
ここまでで、医療費そのものの算定の仕組みについて説明してきました。しかし、実際に私たちが病院のお会計で払う金額は、トータルの医療費から保険料を引いたものになります。次は、患者さんが実際に負担する分の費用を算出するのに欠かせない、医療保険やいくつかの制度についてまとめていきます。
保険適用
私たちが病院にかかる際に、必ず持っていくものの一つに保険証がありますよね。ご存知の通り、日本では医療費の大部分が公的医療保険によってカバーされており、患者さんは通常、医療費の30%を負担し、残りの70%は保険が支払います。この仕組みによって、高額な医療費を負担することなく、必要な治療を受けることができるのです。ただし、保険の適用範囲は基本的な医療行為に限られているため、特定の疾患や治療法に関しては保険が適用外になることもあります。患者さんは事前に確認することが重要です。
高額療養費制度
高額療養費制度は、特に高額な医療費が発生した場合に患者さんの負担を軽減するための制度です。この制度によって、月間の医療費が一定額を超えた場合、その超過分が払い戻されます。この月ごとの上限額は、患者さんの年齢や所得に応じて設定されます。たとえば、所得が低い患者さんの場合、上限が低く設定され、高額な医療を受けても自己負担が少なくなるようになっています。
自立支援医療(育成医療)
育成医療は、18歳未満の子どもで、先天性の障害や成長に伴って治療が必要となる疾患がある場合に利用できる制度です。対象となる疾患は決まっており、たとえば心臓や腎臓の疾患、人工内耳の装着、身体機能のリハビリなどが含まれます。国や自治体が医療費の一部を負担し、残りは自己負担となりますが、こちらも所得に応じて自己負担額が軽減される仕組みになっています。
診療報酬の改定
医療技術や治療方法は日々進化しています。たとえば、新しい薬や手術技術の導入により治療が簡略化されることもあれば、精密検査のように高度な技術が求められることもあります。そういった時に適切な医療が提供されるように、指標である診療報酬もアップデートしていく必要があります。最後に、診療報酬改定に関して、お話ししようと思います。
診療報酬改定
診療報酬は2年ごとにおこなわれます。厚生労働省が中心となって国民や医療機関の意見を取り入れながら進められ、医療政策や社会状況、医療技術の進歩に基づいて、診療報酬の点数を調整します。この改定によって、医療の質が向上し、新しい治療法や薬剤が反映されることを目的としているのです。
たとえば、新たに効果が確認された治療法には、報酬が追加されることで、医療機関がそれを導入しやすくなり、最新の医療技術が患者さんに提供されやすくなるといったメリットがあります。新しい治療法や治療薬の導入にはエビデンスに基づく評価が行われ、科学的根拠に基づいて報酬が設定されます。
また、診療報酬の改定は、医療従事者の働き方にも大きな影響を与えます。たとえば、近年の診療報酬改定では、医師や看護師の長時間労働を是正するための「働き方改革関連加算」が導入されています。病院が医師の勤務時間を短縮したり、交代勤務を整備した場合、その病院に対して報酬が上乗せされるといったわけです。これにより、医療従事者が働きやすい環境を整える動きが広がっています。
ほかにも、夜間や休日の診療には「救急医療管理加算」などの特別な報酬が設けられています。これにより、特定の医師に負担が集中することを防ぎ、シフト制で適切に人員を配置しやすくなります。働きやすいシフトが組まれれば、医師や看護師さんの心身の負担も減りますね。
このように、診療報酬改定とは、病院側と患者さん側の双方にとって重要な仕組みなのです。
まとめ
今回は医療費選定の基本的な仕組みについて整理しましたが、いかがでしたしょうか。
普段何気なく眺めている診療明細書も、仕組みを知るとまた違った見え方になるかもしれませんね。
今回の目的は個々の用語の習得でしたが、やはり流れに沿って学んだ方が内容が頭に入ってきやすいなと個人的に思いました。またわからない用語がでてきたら、記録用のノートがてらに、ここにまとめようと思います。